ブリュッセルの露店でユニコーン号の模型を買ったタンタンは、伝説の財宝をめぐる争いに巻き込まれ、拉致されて船の一室に監禁されてしまう。そこで出会ったハドック船長とともに、財宝のありかを求めてモロッコへと向かうのだ。場所は明らかにされているのだが、年代ははっきりと示されていない。ただ、登場するクルマを見れば、ある程度の推定はできる。冒頭に書いたプジョー302のほかに、「シトロエン2CV」「シトロエン・トラクシオン・アバン」「ルノー4CV」が街を走っている。モロッコでの戦いには「ウィリス・ジープ」も登場する。この中で販売された時期が最も遅いのが2CVの1949年だから、ざっくり1950年代の設定だと考えればいいのだろう。
サイドカーやプロペラ機も出てきて、みんな立体映像で暴れまわるからすさまじい臨場感だ。3D時代には、カーチェイスの撮り方も変わってくるのかもしれない。目に突き刺さるような効果ばかりを狙った3Dは観ていて疲れてくるが、奥行きを表現する使い方もある。スピルバーグは両方の特質をうまく利用し、激しい動きとめまぐるしい視点転換で3Dの利点をフルに引き出している。キャメロンもうかうかしていられない。
どうやらこの作品には続編があるようだ。今度は制作と監督が入れ替わって、ピーター・ジャクソンが監督することになるという。ところで、娯楽作としては文句のつけようがないのだけれど、この映画にはひとつ弱点がある。原作はフランス語だが、これはアメリカ映画なのだ。だから、フランスの名前を英語読みすることになる。タンタンのつづりは「Tintin」だから、ちょっとマズい読み方になってしまうのだ。主人公のセリフを聞いていると、思いっきり「マイ・ネーム・イズ・ティンティン」と言っている。気になるようなら、吹き替え版で観るのがオススメだ。
(文=鈴木真人)
出典:
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