こんにちは、大庭です。
相変わらず暑い日が続きますが、こんな時はやっぱり怪談ですね。
(前回さらっと書いたハナシが意外にウケたようなので、調子に乗って続けます。)
日本の怪談と言えば「四谷怪談」「皿屋敷」「牡丹燈籠」が三本指でしょうか。
主人公が女性と言う所が共通点です。
尤も、江戸時代の怪談の多くは女性が主役で、化けて出るのも祟るのもことごとく女性の役回りでした。
女性幽霊さん達は、深い情念に満ちた狂気に近い愛情、そして裏切られては果てしない憎悪を相手の男に注ぐのが常道ですが
…昔の男性は女性に対して余程後ろめたい事をしていたのでしょうか(笑)。
歌川国芳描くところの「四谷怪談」(↑)。
私が幼い頃は、夏になるとテレビで旧い怪談映画をやっておりました。怖いと判ってるんだから観なけりゃいいのに観てしまうのが常で、その度に震え上がり、夜中のトイレを我慢する羽目に陥ったものです。
ホラー映画全盛と云われる今日この頃ですが、往時の怪談映画のあのジメっとしたおどろおどろしさにには敵わないような気がします。
ともあれ、怪談は日本の文化にどっしりと根を下ろしております。
演劇でも落語でも絵画でもそして映画でも「幽霊もの」のジャンルが確立しているのを見るにつけ、日本人は古来、夏の暑さ凌ぎに怪談をひそひそと語り合っていたのだろうと、つくづく思います。

葛飾北斎描くところの「皿屋敷」(↑)。
閑話休題。
私共が生業とする自動車ディーラー業界にも、あちこちの店にそれなりの怪談がございます。
前回書いたのもそんな中の一つですが、改めてもう一話ご紹介を…。
そのお店は1Fがショールーム、2Fに事務所と言う造りでした。
ある夏の夜遅く、閉店後の事務所で、店長他1名がもう一人の営業マンの帰りを待っていました。
「あいつ、遅いな~。納車に行った先はそう遠くないのに。」
「お客様と長話してるんじゃないですか?」
などと話している時、階段をバタバタと駆け上がる足音が響いてきました。
「あ、帰って来た。」
しかし待てど暮らせど、事務所のドアは開きません。
「何やってんだ、あいつ?」
事務所を出て、薄暗い廊下を見渡した二人。
「??? 今、確かに、足音が聞こえたよな???」
「はい…バタバタって、階段を上ってきましたよね…」
「誰もいないぞ?」
空耳か…と、事務所に戻ると、今度はトイレの水が流れる音が響きました。
「なんだ、やっぱり、帰って来てるんだ」
「トイレに駆け込んでたんですね」
苦笑いする二人でしたが、それっきり社内はしんと静まり返ったまま。
「おい、お前トイレ見てこいよ。あいつ、出で来ないぞ。もしかして、具合でも悪いんじゃ…」
店長の指示で様子を見に行った男が、少々青ざめた顔で戻ってきたのが数分後。
「店長、トイレにもどこにも、誰もいませんです…」
「え?だってさっきの足音と、トイレの音…」
ギー、バタン!!
その時、事務所のドアが乱暴に開け閉めされました。やはり戸口には誰もいません。
「うわっ!!な、何だ!?」
「あ、あいつ、イタズラしてんですよ!! おい、○○!!いるんだろ!?くだらない事してないで、もう出てこいよ!!」
問い掛けに応える声もなく、恐る恐る二人で廊下やトイレほか、人が隠れられそうな場所を見て回っても猫の子一匹おりません。
ついに、外出の営業マンの携帯に電話した店長。
「お前、何やってんだよ!!すぐに事務所来いよ!!」
震える声を抑えつつ話す店長に、当の営業マンは困惑した声で返しました。
「え?今、お客様のお宅でお話してる最中なので、すぐにと言われても…」
結局その営業マンが帰って来たのは、それから30分もしてからだったそうです。
3人で事の顛末を話している時、誰ともなく言いました。
「いつものアレ、センサーの誤作動じゃないのかも…」
その店では、セキュリティーが深夜に作動して警備員が来るが何も異常がない…と言う事が割と頻繁に起こっており、
その原因は"センサーの誤作動"で片づけられていたのです。
月岡芳年描くところの「牡丹燈籠」(↑)
下手な文章で恐縮ですが、少しでも背中のあたりが涼しくなったのであれば幸甚です。